徹底図解:消防署活無線とは?
一度は廃止の危機に直面しながら、現場隊員の命を守るために生き残った「最強のアナログ無線」の真実。
消防無線の「二刀流」システム
消防救急デジタル無線
- ● 基幹系(きかんけい)
- ✔︎ 指令センターと車両を結ぶ
- ✔︎ 都道府県・広域単位のネットワーク
- ✔︎ デジタル化によりデータ通信も可能
広域・司令塔との連絡
消防署活無線(今回の主役)
- ● 署活系(しょかつけい)
- ✔︎ 現場指揮官と隊員を結ぶ
- ✔︎ 建物内や現場周辺の近距離通信
- ✔︎ 主にアナログ方式を採用
現場内・隊員同士の連携
なぜ一度は「不要」と言われたのか?
2016年頃:メイン無線のデジタル化
基幹系無線が完全デジタル化。「これだけ高機能なら、現場の通信も全部デジタルでいいのでは?」という合理化の議論が加速しました。
効率化の波:電波の有効活用
アナログ波は電波を広く占有するため、「限られた電波資源を有効活用するために、アナログは廃止すべき」という行政的な判断が迫られました。
逆転の結論:現場からの「NO」
「デジタルだけでは隊員の安全が守れない」。
現場の声を反映し、異例の「アナログ署活系の継続」が決定。アナログならではの「最強の強み」が再認識されたのです。
デジタル vs アナログ 通信比較
電波の状態が悪くなったとき、それぞれの聞こえ方はどう変わるでしょうか? 下のバーを動かして、デジタル特有の「崖落ち」を体験してみてください。
※デジタルは一定以下で突然途切れますが、アナログはノイズ混じりでも声が届き続けます。
なぜアナログが「最強」なのか?
1. 圧倒的な即時性
デジタルは接続処理にコンマ数秒のラグがありますが、アナログは送信ボタンを押した瞬間に声が出ます。コンマ数秒が命取りになる現場での絶対条件です。
2. 「崖落ち」しない粘り強さ
上記のシミュレーターの通り、障害物の多い屋内や地下でも、アナログはノイズ混じりながら「最後の言葉」まで届けることができます。
3. 指揮系統の独立性
指令センターとやり取りする広域無線とは別のチャンネルを使うため、現場独自の緊密な連携が混信なく行えます。
4. 究極のバックアップ
万が一、デジタル救急無線システムがダウンしても、シンプルなアナログ無線は電池さえあれば動き続ける「最後の砦」となります。